駄洒落ドリンクの始末

故ジョン・レノン氏の妻、オノ・ヨーコさんが、ポーランドの飲料メーカーを相手取り、商標権侵害などで抗議。このほど和解したというニュースが飛び込んできた。

問題になったのは、英国やヨーロッパで販売されているレモネードの「ジョン・レモン(JHON LEMON)」。「ジョン・レノン(JHON LENNON)」の商標権者(欧州連合知的財産庁=EUIPO)であるオノさんの代理人は、「ジョン・レノンの肖像、愛用の丸メガネや『Let It Be』『Imagine』などの言葉を許可なくラベルデザインに引用していたと主張」(CNN)。誰もが、ビートルズのスーパースター、ジョン・レノンを想起させるとして、抗議に至った経緯を説明している。

飲料メーカーでは「悪意はなかった」というが、駄洒落やパロディを狙った商品であることはいなめない。結果として、名称を「On Lemon」に変更することで和解。11月からは新商品となるそうだ。このケースでは、実は、いわゆる商標権侵害だけでは、判断が難しかったというところにポイントがある。というのも、飲料メーカーでは、オノさんの「JHON LENNON」商標登録に先立って「JHON LEMON」を商標出願していた。誰もが思いつきそうな駄洒落ネタなので、EUIPOのデータベースを確認してみると、37件がヒット。なかには、ハイネケンのスペイン法人もあり、これについても、オノ・ヨーコさんが警告し、5年間以上商標を使用していなかったため、登録が取り消しになったそうだ。

では今回、なぜ和解に至ったのか──。「レモネードを売るためにジョンの作品やイメージを想起させている」という主張に応えたことでもわかるように、飲料メーカー側は、イメージそのものを流用したことに関し、不正競争防止法(業者間の公正な競争を確保するための法律)や人格権(個人の人格的利益を保護するための権利)といった側面を含めた、総合的な判断をくだしたようだ。

つまり、ジョン・レノンほどのスーパースターともなれば、駄洒落も「シャレ」ではすませられないということ。ちなみにわが国でも、オノ・ヨーコ氏は、「Jhon Lennon Museum」(第4488030号)他の商標を保有している。

ところで、ジョン・レノンで思い出したのが、世界を舞台に活躍するビートルズの和製コピーバンド、「ザ・パロッツ」のリーダーでジョン・レノン役のチャッピーこと吉井守氏が9月12日、62歳で急逝したこと。キャロライン・ケネディ前米駐日大使も大ファンだったそうだ。ちなみにコピーバンドのライブハウスでの演奏は、JASRACの著作権許諾&支払いの対象。ライブハウスではまとめて支払っているケースが多いそうだ。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.25 2017/10/05より