世界に一つだけの花

元号が令和に変わる直前の4月中旬、日本音楽著作権協会(JASRAC)により平成年間(平成元年〜31年)の著作物使用料分配額TOP100の発表があった。ランキングは平成期にJASRACが作詞家、作曲家、音楽出版社などの権利者へ分配した著作物使用料をまとめたもの。CDや配信による売上だけでなく、カラオケ、コンサート、放送などあらゆる利用を反映している。1位はSMAPの『世界に一つだけの花』(作詞・作曲:槇原敬之)、2位は五木ひろし・木の実ナナの『居酒屋』(作詞:阿久悠/作曲:大野克夫)、3位はアニメBGM『エヴァンゲリオンBGM』(作曲:鷺津詩郎)。以下、『川の流れのように』『残酷な天使のテーゼ』『ふたりの大阪』と続く。

なかでもダントツのTOPとして注目されたのが『世界に一つだけの花』。シングルの発売は平成15(2003)年と平成期のちょうど真ん中。戦後の復興から高度経済成長、バブルの昭和を経た平成不況のさなかで、人それぞれの幸せとは何かを考え始めたころ。「ナンバーワンではなくオンリーワン」というメッセージはまさに平成という時代を象徴するもの。累計販売数は312.7万枚(2019年2月オリコン調べ)にのぼった。

槇原敬之氏の談話によれば「ナンバーワンではなくオンリーワン」という歌詞のベースには、それぞれがそれぞれの個性に無限の尊厳性を認めあい存在するという仏教の教えがあるそうだ。また「SMAPがいてこそできた曲」と明言している。それではSMAP解散後のいま、仮に再結集したとして、彼らによる再演やレコーディングの可能性はあるのだろうか。

著作権信託と大人の事情

音楽著作権の観点からみると、著作権者は作詞家と作曲家。一般的には作詞・作曲の著作権をJASRACCのような著作権等管理事業者に信託するほか、音楽出版社(著作権管理やプロモートを行う)に著作権を譲渡したうえで、信託する方法がある。JASRACのデータベースJ-WIDによれば、『世界に一つだけの花』は、槇原氏個人の作詞・作曲とジャニーズ出版の出版者と3件の権利者が登録されている。JASRACでは特定の人のみを対象に許諾を否認できないから、著作権上は誰でも利用できそうではある。が、ここで終わらないのが大人の事情。芸能プロダクション所属アーティストの場合、専属実演家契約を結び、一定期間、第三者はレコーディングできないことにするのが一般的。つまり仮にSMAPが再結成したとしても事実上難しそう。槇原敬之氏はSMAP解散直後に「歌い継いでいくのは僕らしかいない!」とラジオ番組で発言したそうだ。カラオケ行かなきゃ!

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.40 2019/05/24より