中国に負けた? 無印良品

2019年11月、「無印良品」ブランドで知られる(株)良品計画が中国の現地企業と商標「無印良品」を争ってきた問題で、良品計画が敗訴、約1000万円の支払いを命じる判決がでたというニュースが飛び込んできた。判決は、北京市高級人民法院の二審によるもので、日本の最高裁判所に相当するもの。良品計画は一審でも敗訴しており、この二審判決をもって訴訟は終結。すでに賠償金は支払われているそうだ。無印良品といえば、1980年、量販店の西友や西武百貨店などで販売を開始した、プライベートブランド。2020年2月期の会社計画(予想)では売上高4554億円、海外を含め420店舗にのぼっている。それではなぜ、良品計画は敗訴してしまったのだろうか。

良品計画の「無印良品」の日本国内商標を確認してみると、1982年、無印良品の名入札などのロゴマークを15の区分で出願。後の1993年以降、赤いゴシック体のロゴでの商標出願している。また外国出願も、海外への展開を始めた1993年以降のことだ。今回、係争の焦点となったのは、2001年中国で登録となった海南南華実業貿易の商標「無印良品」。タオルなどを対象とする24類で、後の04年には北京棉田紡績品有限公司に譲渡されていた。一方、良品計画は05年に中国へ進出をはじめる。北京棉田では、上海無印良品を設立し、日本の無印良品そっくりの「無印良品Natural Mill」の展開を始めていたのだ。

パクったもん勝ち?

つまり——良品計画が現地での出願・登録や中国の進出をする以前に、中国で商標「無印良品」が無関係の他者により取得されてしまっていたということ。むろん、日本でのブランド人気を知ってのことだろうし、知的財産権は国ごとの独立の法制度だから、いったん中国商標局によって登録になった商標は、現地ではやむなしだ。ちなみにこうした中国での〝パクったもん勝ち”の商標には、「有田焼」「讃岐うどん」がある。

ところで良品計画では、欧米への進出とともに2016年頃から「MUJI」を前面に押しだしたブランド展開を積極的に行ってきた。MUJIは、中国人の間でも絶大な人気をほこっており、MUJI=(日本発の)本家無印良品という認識が広がっているのが実情らしい。また、中国国内からも「北京棉田は登録商標を返上すべし」という声が挙がっていると聞く。とかく知財意識が低いかのように思われてしまう中国だが、2008年に知的財産を国家戦略に位置付けて以来、着実に実績を挙げてきている。なんといっても知財裁判がインターネット中継されるほど世界一すすんでいるとも言われる。奢れるものは久しからず。知的財産の実績においても中国から目が離せない。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.47 2020/01/30より