知財が支えるオリンピック

コロナ禍で開催があやぶまれる東京2020オリンピック・パラリンピック。3月25日、福島から聖火リレーがスタートしている。こうした市民の期待を背景にオリンピック関連の知的財産権侵害もあとをたたない。財務省によれば2019年の輸入差止件数(総件数)では100万点を超え、このなかに会社員によるレプリカのメダルや輸入商によるマスコットのピンバッジなどの検挙もあったそうだ。

オリンピック・パラリンピックに関する主な知的財産としては、オリンピックシンボル(五輪マーク)、パラリンピックシンボル(スリー・アギトス)のほか、エンブレム、マスコット、ピクトグラム、大会名称などがある。いずれも日本国内では「商標法」「不正競争防止法」「著作権法」により保護されており、国際オリンピック委員会(IOC)のほか、日本オリンピック委員会(JOC)、東京2020組織委員会の3団体が権利保有している。

スポンサー及びライセンシーは、多額のお金を支払う見返りとして(スポンサーレベルに応じて)、オリンピック関連商標や、商品・サービスのサプライ権、大会関連グッズ等のプレミアム利用権などを使用する権利を得ることができる仕組みだ。つまり、東京オリンピックは商標をはじめとする知的財産制度に支えられているといって過言ではない。総額6300億円の予算うち、国内外のスポンサー料(約4040億円)、ライセンシング(140億円)なのだ。

手づくり布マスクに五輪マーク

ところで、オリンピック関連商標の摘発で気になったのが、大阪府の無職の女性が販売していた五輪マーク入りの手づくり布マスクだ。百貨店で五輪商標入りの布を購入し、マスクに仕立て、フリーマケットアプリで販売し、商標権を侵害した疑い、というものだ(2021年1月15日)。

メルカリなどのフリーマッケットアプリやオークションサイトのほか、趣味や副業としてハンドメイド品を販売するサイトが花ざかり。コロナ禍で在宅時間がふえた人のなかには副業の位置づけとしてハンドメイド品を販売するひとも多くなってきた。

実際、ネットで検索してみると、五輪マークのアップリケやピアスなどのハンドメイド品が多数出品されており、このほかにも、フリー素材イラストのサイトにも、五輪マーク関連は多数あった。これらには「商用利用不可」と明記されているものの、どこまで拘束力があるかは不明だ。

ちなみに「がんばれ!ニッポン!」のスローガンも、JOCの登録商標。応援したい気持ちをもとに、オリジナルTシャツに文言をいれることは個人利用である限りはOKだが、販売は商標法違反に該当する。おまけに、販売量は関係ない。

あくまで“商用利用”が違法になるのだが、製作も販売も簡単にできてしまう現代生活———ハンドメイド品の購入にもお気をつけあれ。

特許業務法人プロテック ちざいネタ帖 Vol.54 2021/04/01より