ダンスの振付と著作権

近年は学校教育の現場でも必修化されたダンス。フォークダンスなど大勢で楽しく踊るものから、プロによる難易度の高いものまでさまざまなものがあり動画サイトでも人気だ。そのダンスを魅力的なものにしているのが振付。そのダンスの振付に関し、著作権侵害の法廷闘争があった。

原告は、ハワイ在住のフラダンス指導者。自らが創作した振付を許可なく著作権を侵害されたとして、フラダンス教室運営団体を相手どり、教室での指導や会員による上演差止などを求めて大阪地裁に提訴。2018年9月20日、著作権侵害を認め、会員への指導や国内上演禁止と損害賠償金の支払いを命じる判決が出、指導者である原告が勝訴した。

運営団体側は「フラダンスは基本動作の組み合わせにすぎず、著作権はない」と反論していたが、裁判では「楽曲の振付で部分的に作者の個性が表れていれば、その一連の流れ全体の著作物性が認められる」と判断された。それでは、ダンスの振付における著作権はどう定義づけられるのか。まず、著作権法で保護される著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項)と、あいまいな表現。しかし著作物の具体的例示のなかには「舞踏又は無言劇の著作物」が挙げられており(著作権法10条1項)、ダンスの振付もここに含まれる。実際、過去の裁判事例でも、日本舞踏の創始者が二代目家元を訴えた訴訟で、「各舞踏は振付者の思想、感情を表現したもので著作性を有する」と認められた。一方、映画『Shall We ダンス?』のテレビ放映の際、振付師が映画会社を提訴したが「既存ステップの組み合わせで独創性を認めるほど顕著な特徴はない」と退けられたこともある。

踊るときには許諾が必要?

つまり、振付師が独自に考えた、思想又は感情が創作的に表現されたものであれば著作物とされるというのが前提。著作物はすでに存在するステップの組み合わせにとどまらない顕著な特徴を有する独創性が必要ということになる。

したがって、振付師が考えた振付(著作物)を踊る場合には「公衆に直接見せる場合は上演権」(著作権法22条)についての許諾が必要になってくる。「公衆」とは、お店で踊ったり、学校や会社の行事など特定多数の場合もさすので注意が必要。ちなみに、非営利・無料・無報酬での上演であれば許諾の必要はない。公民館でボランティアで踊ることなどがこれにあたる。つまりAKBの「恋チュン」ダンスにも著作権はあるが非営利・無料・無報酬ならばOK。ただしそれを撮影したら上演権の、動画サイトに公開すると公衆送信権の侵害になってしまう。著作権リテラシーは一人ひとりが身につける時代。ダンス好きのみなさん、理解した上で楽しんでください!

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.34 2018/10/10より