関係業界は要注意。
  知っておきたい改正意匠法

2020年4月に抜本的大改正が行われた意匠法。登録例もニュースになり、改正の概要について全容がみえてきた。たとえば20250年11月に初の登録になったのは、「蔦屋書店(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)」の天井までの高さの棚に囲まれたロングテーブルのある内装や、書架で囲まれた小部屋が連続する「本の小部屋」。回転寿司の「くら寿司」では、アートディレクター佐藤可士和氏を起用したやぐらを組んだ内装。このほか、JR上野駅の駅舎や横浜にあるユニクロPARKの外観などだ。

意匠権とは、新しく創作された意匠=デザインを創作者の財産として保護するもので、改正前の意匠法では、家電や日用品、自動車など量産化できる「物品」の形状が対象。市場の競争力を高める一方で模倣やコピーの対象になりやすいためだ。

意匠権は、独占排他権であり、差止請求権、損害賠償請求権など効力が高く、また権利侵害の発見、つまり第三者による模倣が発見しやすいという面がある。意匠権は、場合によっては特許権よりも強力な効果を発揮する重要な産業財産権なのである。

意匠登録のわかりやすい例では、スマートフォンやバイクの外形、ペットボトル飲料の容器等。有名どころではヤクルトのプラスチック容器は1965(昭和40)年に意匠出願、75年に登録となり、権利期間満了の後、現在は立体商標登録されている。

建築デザイン業界は激震?

今回の意匠法改正はのポイントは、不動産である(1)建築物、(2)内装に加え、無体物である(3)(物品に化体しない)画像意匠、(4)これらを構成要素とする「組物」が新たに保護対象となったことだ。

つまり、昨今、外観や内装に特徴的な工夫をこらして「ブランド価値」を創出し、サービスの提供や製品の販売を行う事例がふえ、保護可能とする必要性がでてきたことが背景にある。

こうした流れは、実は、デザイン業界や建築・不動産業界のほか、アプリ開発など、これまで意匠法と関わりなかった業界に、大変革をせまっている。

例えば、デザイナーの立場にたって考えると、これまでは自分で創作したデザインは著作権で保護されており、デザインを利用する側(依頼した企業)は、著作権処理する。企業側はリスク回避のため、この契約に意匠創作者としての権利(意匠登録を受ける権利)も規定しておく必要がある。

また、今回の改正でデザインが保護された結果、今までのように他人のデザインを自由に使えなくなるケースもあれば、故意か否かにかかわらず無断で使用した結果として、意匠権侵害にあたる行為をおかしてしまうこともありうる。マーケットの変化に呼応する知的財産シーン。気になる方はぜひご相談ください。

特許業務法人プロテック ちざいネタ帖 Vol.53 2021/02/08より