立体商標「きのこの山」

2018年5月10日、株式会社明治は3月30日付で「きのこの山」が立体商標に登録されたと発表して一躍話題だ。「きのこの山」は1975年発売のチョコレートスナック菓子。2層のチョコレートに加えたクラッカーとの味わいが人気だが、スタイリッシュ全盛の時代にあえて郷愁を誘う「きのこの山」の名を冠したことがヒットの要因といわれた。

立体商標としては、2015年8年に出願したものの2017年に特許庁により登録を拒絶され、さらに6月20日に再出願。ねばり強く認知度調査データや生産量・販売量・広告宣伝量などをまとめた調査報告を意見書として特許庁に提出。90%以上が「見ただけできのこの山だとわかる」という認知度調査の結果、識別力を有していることが認められ、このほど、めでたく立体商標として登録されたわけだ。

菓子では珍しかった立体商標

立体商標とは、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合も含まれる)からなる商標のことで、1997年4月に施行。過去に立体のみで登録された例では、日本ケンタッキー・フライド・チキンのカーネル・サンダース立像、コカコーラの瓶、ヤクルトのプラスチック容器、キッコーマンのしょうゆ卓上瓶などがある。つまり多くのひとが「ああ、あれね」と判ることが必要。また企業名や商品名の文字やマークが付いていれば登録は容易だが、ふつうは菓子の一つひとつに名をつけているわけでもない。

きのこたけのこ戦争のゆくえ

こうした理由のほか、菓子そのものではデザインの選択肢が狭いために、登録のハードルが高かった。菓子の商品区分(30類)では、世界的に有名なHARIBOのグミしか登録になっておらず、かの銘菓「ひよ子饅頭」(ひよ子社)ですら、2015年に出願して以来、現在も拒絶査定不服審判中なのだ。今回の「きのこの山」の立体商標登録がいかに画期的であるかわかると思う。

ところで、79年発売の姉妹商品「たけのこの里」との間で、〝きのこたけのこ戦争〟が勃発していることをご存じだろうか。「きのこ党」「たけのこ党」それぞれに特設サイトがあり、たけのこ党302万票余、きのこ党187万票余と、たけのこ党が大きくリード(2018年5月10日現在)。マニュフェストや賞品付きキャンペーンなど大々的に展開している。ちなみに明治では「たけのこの里」の立体商標出願の予定はないらしい。さて。あなたはどちら?

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.30 2018/05/22より