ただのりNG! 地域団体商標

小田原おでん本店では、かまぼこメーカーの食べ比べができる。
小田原おでん本店では、かまぼこメーカーの食べ比べができる。

 

いま、“小田原”が熱い。

1月に放送されたNHK『ブラタモリ』では小田原用水など「小田原は江戸どころか全国の城下町の原点」とタモリが絶賛するほど。2016年5月1日には小田原城天守閣がリニューアルオープン。地域の木材を用い、木造構法による耐震改修が市民グループも参画して完成し、人気を集めているそうだ。

その、小田原で商標トラブルが起きた。

地域団体商標「小田原かまぼこ」(第5437575号)、「小田原蒲鉾」(第4734753号他)を無断使用しているとして、小田原蒲鉾共同組合が神奈川県南足柄市の食品会社を相手どり、販売差止と損害賠償約5000万円を求めて訴訟提起。2016年5月27日、第一回口頭弁論が横浜地裁小田原支部において開かれた。

地域団体商標「小田原蒲鉾」

商標「小田原かまぼこ」、「小田原蒲鉾」は、平成23(2011)年登録の地域団体商標。組合側では組合に未加入の食品会社が“小田原かまぼこ”の名を用いて首都圏のスーパーなどに販売しており、再三の警告にもかかわらず商標の使用を中止しなかったための提訴と説明。一方の食品会社では「商標登録以前から名称を使用していたので権利の侵害にあたらない」と主張し、全面戦争のかまえだ。

 

おでんも熱い! 攻めの小田原

 

地域団体商標とは、地域特産の農産物名などに地域の事業者が協力して商標権を取得する制度。一定の地理的範囲で有名であること、地域名+商品・役務名で構成される商標である等の条件がある。地域団体商標は、出願以前から使用している場合はその範囲内で使用が認められるため、食品会社側は出願以前の使用を立証できるかどうかがポイント。ただしこの継続的使用権は「不正競争の目的でないこと」が要件。つまり、出願以前であっても「小田原かまぼこ」がすでに広く知られていた後に「ただのり(=フリーライドという)」している場合には認められない。ちなみに小田原かまぼこの発祥は天明年間という説が有力だ。

ところで、小田原蒲鉾共同組合をベースに、もうひとつの小田原名物が誕生している。それが「小田原おでん」(第5061077号)。蒲鉾業者13社のほか、豆腐・こんにゃく店など地元商店により「小田原おでん会」を組織。30種以上のオリジナルおでん種が創出されている。小田原城址公園を会場にした「小田原おでんサミット」、「小田原おでん種コンテスト」、「小田原おでんまつり」なども定着。かまぼこ通りには実店舗「小田原おでん本店」もある。

地域産の材木使用や地域の伝統的職人の手による落ち着いたインテリア、各社による個性的なおでん種が一つの鍋で煮こまれる光景──地域を愛し、手を携えて未来を創り出そうとする姿が見えてくる。

 

*特許業務法人プロテック プリント版『』ちざいネタ帖(VOL.11/2016/6/30)より

「ただのりNG! 地域団体商標」への2件のフィードバック

  1. この訴訟は、どうなったのですか?
    請求人又は被請求人が勝訴、和解ですか。ネットで調べても出てこないので教えてください。

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