特許法や商標法の条文を特許庁がどのように解釈しているかを理解できます。
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特許庁が、特許商標関連の法律の逐条解説を公表しました。くわしくはこちら。
1985年の発売以来、史上最も影響力のあるゲームとして知られる「スーパーマリオブラザース」。発売元の任天堂(株)は、社長メッセージにおいて「『任天堂IP(知的財産)に触れる人口を拡大する』ことに注力してゆく」と述べているように、知的財産経営の先端をいく企業として知られている。
その任天堂が、2月末、公道カートのレンタルサービス会社[(株)マリカー]を相手どり、不正競争行為及び著作権侵害行為の差止及び損害の賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起したと発表した。
都心でカートを見かけたことのある人たちの反応は、「あれって、任天堂がやっているか、ライセンスじゃないの?」というもの。実際、マリカーの声明では、複数の弁護士・弁理士に相談した上で侵害行為に当たらないと判断したことを表明。また、任天堂の許可なく模造された衣装を販売・レンタルしている悪質業者に対し、任天堂の担当者と協議・情報交換を行っていたことが明かされている。
決着は裁判の行方を待つしかないが、法的にみればゲームの著作権をもつ任天堂の主張はおおむね認められる可能性があるだろう。ただしこの係争が著作権侵害というよりは、「不正競争行為」に力点が置かれていることに留意する必要がある。
任天堂が問題視しているのは(1)マリオカートの略称であるマリカーという標章を会社名として使用していることに加え、(2)マリオ等の著名なキャラクターのコスチュームを貸与した上、そのコスチュームが写った画像や映像を当社の許諾を得ることなく宣伝、営業に利用していることなのだ。
公道カートレンタルは外国人旅行客の人気が高く、Instagramや旅行情報サイトへの投稿等が急増。マリカーではこれを公式サイトやSNSに投稿し、任天堂はこれが営業主の混同や顧客吸引力を発生させている可能性が大きいとしたわけだ。
そうなると気になるのが、町にあふれるコスプレ。
一般にキャラクターの衣装は、キャラクター全体の複製とはいえないため、著作物の侵害には当たらないと考えるのが一般的。ただし、企業などが営利目的で衣装の製造販売をする場合には商品化権のライセンス対象となるし、コスプレイイベントやコミケなどで多数の人に見せるために製作をした場合や、コスプレイヤーが有料モデルとして活動する場合には、私的使用など適用除外に当たらず、許諾が必要になってくる。さらにいえば、コスプレ画像をSNS等に投稿すると法的には「複製物の目的外使用等」(著作権法第49条)に当たると考えられる。現状では著作権は親告罪だから問題が大きくなっていないだけ。実態からみればグレーゾーンも多い。なんともきゅうくつなのである。
特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.19 2017/03/09より