ファッション・ローの風

11月上旬、日本発のファッションブランド「ザ・リラクス(THE RERACS)」が、巨大ファストファッションブランド「ザラ(ZARA)」を相手どり、勝訴というニュースが入ってきた。コートの形態の模倣・販売が不正競争防止法の不正競争行為に当たるとして損害賠償を申し立てていた事件で、東京地裁は約1000万円の支払いを命じ、両社とも控訴はせずに判決が確定したというものだ。

リラクスでは、米軍ユニフォーム由来のデザインのモッズコートを2016年以前から5万円超の価格で販売していたところ、ザラは2016年に基本形態のみならず細部の形態に至るまでほぼ同一形状のコートを1万円以下という低価格で製造・販売。ネットでも「完コピ品が廉価で手に入る」と話題になっていた。ザラ側は、通知の段階で販売を中止したものの「一般的なミリタリーパーカとしては極めてありふれたものにすぎない」として反論していた。

この件がニュースになるのは、そもそもファッションの識別性は、ブランド保護、つまりロゴマークや商標が主軸で、サイクルの早い服そのものの形状は知財による保護にはなじまないという認識が一般的であったため。実用品である衣服については、著作権法でも保護されないという歴史的背景がある。

しかし、ファッション関連企業の投資回収機会の損失の問題やグローバル化を背景に、デザインやブランドの保護・強化を求める動きが急速に拡大。グローバル規模の紛争事例も急激に増えてきた。

特許出願もさかん

これを受けて欧米では、近年、ファッション業界の知的財産権を保護する「ファッション・ロー」が注目され、ファッションブランドやデザインの保護制度の進展に取り組む専門家も増えてきているそうだ。ただし、解決すべき法制度上の問題は、山積。これからの分野と言わねばならないだろう。

ファッションの権利保護では、現状では、商標登録でブランド保護をするほか、「立体商標」や「意匠」で保護を図る例も増えてきている。このほか、機能性などをうたい、特許出願する例もある。

例えば、ZOZOTOWNのZOZOSUIT。身体の寸法を瞬時に採寸できるという、伸縮センサーを内蔵した採寸ボディスーツ。特許庁のデータベースをみると「サイズ測定装置及びサイズ測定システム」などの特許を出願している。運営会社の(株)スタートトゥデイでは、ホームページ上で「ZOZOSUITよりも更に簡単に低コストで高精度な体型計測が可能となるアイデアや特許」を募集。3億円という買取価格を提示するなど知財戦略に積極的な姿勢だ。衣服のデザインのみならず、購入法やシステムなどファッションそのものが変容するいま——弁理士といえどもファションに無関心ではいられなさそう。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.35 2018/11/20より