ひろがる立体商標

猫の手も借りたいというたとえはいまは昔。人手不足解消の担い手といえば外国人労働者、そしてロボットだろうか。ホテルや飲食店などの接客対応で見かけることが多くなってきたヒト型ロボット「Pepper(ペッパー)」。2018年11月下旬、立体商標登録【登録第6081795号・6047746号 ソフトバンクロボティクスグループ(株)】というニュースが飛び込んできた。

立体商標とは、立体的な形状からなる商標をいい、日本では1997年4月施行した比較的新しい商標制度だ。立体商標は、商品の形状そのものではなく、それに蓄積された「業務上の信用」を保護しており、その立体が「あそこのアレ」とすでに消費者のあいだに周知されていることが登録の要件。有名どころでは、カーネルサンダース【日本ケンタッキーフライドチキン】やペコちゃん・ポコちゃん【不二家】の立像のほか、ヤクルトプラスチック容器【ヤクルト本社】、ホンダ・カブ【本田技研工業】など、2018年末現在、2600件余りが登録されている。

立体商標は登録へのハードルが高く、今回のPepperの登録は、胸につけたタブレットや丸みを帯びた下半身の形状などが、ソフトバンクの商品であることが広く認知されていると、特許庁によりお墨付きがでたことを意味する。登録となるまでには、特許庁に対してさまざまな資料や証拠を提出したはずで、相当な苦労があったことが想像できるのだ。

ソフトバンクでは海外で模倣品が出回っていることを憂慮しており、今後は模倣品対策にいっそう力を入れていくことになりそうだ。

使用に関するガイドライン

さらに注目したいのは、ソフトバンクが、以前からPepeerの知的財産の資産価値を重要視し、「商標・著作権・Pepperキャラクターに関するガイドラン」を策定。Pepperの購入者やマスメディア、イベント会場、ロボアプリの開発者に至るまでを対象に徹底させていることだ。例えば、Pepperには一定の肖像権に準ずる権利を有しているという立場にたち、広告目的やタレント的に登場させたい場合には申請制をとっている。また表記についても、「Pepper」以外は認められず、大文字や小文字表記は認められていないのだ。

ちなみに、物の形状を保護したい場合には、通常は、意匠登録を検討することになる。ヤクルトプラスチック容器は昭和50年に意匠登録し平成3年に権利満了した後、立体商標出願を行った。意匠の権利期間は20年だが、商標には更新制度があり、半永久的に権利保護ができるわけだ。Pepperについても、すでに意匠登録されており、今後は、意匠と立体商標の併用による権利保護がすすんでいきそうだ。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.36 2018/12/20より