ブランド農産物の知的財産

2020年に向けインバウンド戦略が多方面で本格化している。日本の食文化や食材も例外ではない。とくに将来にわたるインバウンド増大のほか、食材や農産物の輸出についても成長分野としても期待。平成28年輸出実績は7502億円、平成31年には1兆円に達する見込みなのだ(資料=農林水産省)。そうなると気になるのが模倣や技術流出の問題。もちろん知的財産も無縁ではない。

農産物等を権利保護する方法には、特許庁管轄の商標や地域団体商標、特許制度のほか、農林水産省管轄の地理的表示保護制度がある。また新たに創作した植物の品種は、種苗法に基づき、農林水産省に出願して品種登録する制度がある。登録されると育成者のみが独占的に生産販売することができる。特許では、その品種の育成方法やDNAについても保護が可能。現実にその品種栽培が実現していなくても特許化できるという特長があるのだ。

また、新たな品種が農林水産省に登録されると、登録された品種名と同じまたはそれに類似する名称については、商標登録にならないというルールがある(商標法第4条1項14号)。輸出となれば、外国での権利化も必要となってくる。つまり農産物の権利保護には、複数の制度があり、この使い分けや戦略が重要になってくるのだ。

とちおとめは商標じゃない

例えば、イチゴの「とちおとめ」は、品種名と同名称であるため、商標登録されない。とちおとめの種を購入して栽培し誰もが、とちおとめの名称で販売することができる。一方の人気ブランド「あまおう」はといえば、品種登録は「福岡S6号」とする一方、全国農業組合連合会(JA全農)名で、「あまおう」を商標登録(第4615573号他)。更新により永続的にブランド価値を高めようという意図がみえる。韓国でも権利化されており、今後は諸外国への登録を広げていく可能性がある。

こうした地域ブランド農産物の活発化を背景に、農林水産省では、輸出力強化を目的に積極的支援策を講じるようになってきた。例えば、平成28年度よりはじまった「植物品種等海外流出防止総合対策事業」。海外品種登録出願経費支援を実施(29年度は6月15日公募終了)。具体的には、1件の申請につき200万円をめどに、国内外における出願申請費等のほか、翻訳や通信、運搬費などの経費を対象に2分の1の補助率で支援している。

これらの相談については、都道府県の「知財総合支援窓口」が担当。従来からの地域団体商標・商標・特許出願に関わる相談のほか、従来は農政局で扱ってきた地理的表示種苗法に関わる相談についても、連携して受け付ける態勢をとるようになってきた。

もちろん私どもでも、相談にのっている。気になる方はご一報ください。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.22 2017/06/08より