〝悪意〟に負けるな!商標登録

このところ「悪意」という言葉をよくみかける。といっても知的財産やそのニュースの世界のおはなし。具体的には「悪意の商標出願」というものだ。

当初、悪意の商標出願として問題になったのは、中国企業などが、諸外国の地域の特産品の名称や人気キャラクターなどの名称を無断で商標登録していることをさした。例を挙げれば、八女茶・宮崎牛などの地域産品をはじめ、クレヨンしんちゃんのキャラクター、備前焼や輪島塗といった伝統工芸品のほか、ヨネックスや無印良品のロゴも現地で商標登録され、粗悪品が出回るなど被害は甚大。

特許庁では2015年6月『悪意の商標出願に関する報告書』を発刊。これは2014年末に東京で開催された日米欧中韓の商標担当五庁による会合における各国の制度・運用に関する報告書で、つまり商標やブランドの重要性が広く一般に浸透し、また商品・サービスがグローバル化するにつれ、こうした悪意が跳梁跋扈する事態に。各国でも対応に追われているものの、策は後手に回りがちだ。

ちなみに中国で訴訟を起こすには500万円以上の費用がかかり中小企業には大きな負担。そこで特許庁では海外での知財侵害対策事業の一環として訴訟費用補助制度を開始した(〜2018年度まで)。 悪意に対してどう防御し対抗していくか──領海侵犯と同様、性善説では対抗できなさそうだ。

全出願の1割超!悪質な商標出願

さらに──国内の商標出願シーンでも〝悪意〟が問題として浮上してきた。「STAP細胞はあります」「自撮り」「歩きスマホ」「保育園落ちた」など、誰もが知る言葉をある特定の会社が商標出願。他人の商標を先取りするようなその出願数は平成25年以降年間1万件以上にのぼり、平成27年には、年間10万件前後といわれる全出願数の1割以上を占めた。このほかに、政党名の「民進党」や群馬県で開館予定だった文化複合施設の愛称「太田BITO」も、「BITO」 が出願されるなど、影響は多方面に渡る。これがTwitterの商標botで話題を集めるようになり、困惑が広がっている。

特許庁では2016年5月17日、「自らの商標を他人に商標登録出願されている皆さまへ(ご注意)」と題し、「ご自身の商標登録を断念する等の対応をされることのないようご注意ください」と異例のコメントを発表。これらの出願のほとんどが、特許庁へ支払う出願手数料(印紙代 ともいう)の支払いのない、手続上瑕疵のある出願で、 出願の日から一定期間は要するものの出願却下処分を行っていることを説明している。トラブルを避けたいがために正当な出願者が登録を断念する必要はまったくない。

断固たる態度で臨めば、おのずと解決の道は見えてくるはず。気になったらまずはご相談ください。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.12 2016/08/05より