この手があった!「希釈化」ならぬ「濃縮化」

2016年3月14日の発売以来 (東日本地区)、コンビニエンスストアで売り切れ続出の「ペヨング ソースやきそば」。ロングセラーの本家「ペヤング ソース焼きそば」 とは異なる横長のパッケージながら、まったく同じ印象のカラーリング、似たような名称………。

「誤字?」、「商標権侵害?」など、世間の憶測を呼んでいる。実はこれ、本家ペヤングを主力商品とする〝まるか食品株式会社〟(群馬県伊勢崎市)が発売した商品。「ペヨング」は、麺の量を14g減らした廉価版で、「気になる本家との味の違いは食べてみてのお楽しみ!」(まるか食品)だそう。2014年の異物混入事件で全面的製造ラインの見直しを行った同社が、満を持して新発売するセカンドライン商品というわけだ。

本家「ペヤング」は、発売に先立つ2年前に調味料等の区分で商標出願。後に即席そばの麺や野菜ジュースなどの指定商品でも商標を取得している(第1201550号)。一方の「ペヨング」は、発売直前2015年11月24日に出願。ペヨング発売と前後して、似たようなネーミングの「ペユング」も、商標出願していることがわかった。さらにあらためて確認してみると、本家「ペヤング」出願の1976年に同時に「ペアング」を出願。現在も商標権を保持していることがわかっている。

ブランド史上初? 商標の濃縮化戦略

「アレンジを加えることなく、直截にアピールを重ねる」。ブランド戦略の王道である。この王道を歩むものが気をつけねばならないのが普通名称化。例えば、「うどんすき」は老舗うどん店、美々卯の登録商標だが、東京高裁により普通名称化していると判断された。こうした有名な商標について、他人が様々な商品やサービスに使用することで、その商標としての機能を弱め、普通名称化しようとすることを、「商標の希釈化」という。

一方、似たようなネーミングの商標を取得するまるか食品のブランド戦略は、この希釈化の逆をいく「濃縮化」戦略というべきであろう。異物混入事件からの立ち直りをかけたセカンドライン商品の投入。あえて近い商品に近い名称を与える。これにより商標権の効力を濃くしようとする戦略と見る。

色のついた溶液をシャーレに入れて上から見ても色は薄い。しかし、同じ量の同じ液体を試験管に入れて、上からみれば濃い色に見える。シャーレや試験管は、商品の違い。色のついた液体は商標である。

商品をわずかの違いで差別化し、似た名称をつけることで信用回復を図る「まるか食品」の戦略を商標の濃縮化戦略と見て応援したい。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.8 2016/03/31より