一枚上を行く商標戦略-資格・検定ビジネス編

山形県の川西町が町産の紅大豆をPRするために「マメリエ」という商標を登録しました。郷土の豆料理を広く知らしめるなど町おこし活動を展開しています。

豆のソムリエ「マメリエ」を商標登録 川西町産をPR /山形
https://mainichi.jp/articles/20170607/ddl/k06/040/034000c

「ソムリエ」に倣った「○○リエ」という商標は、以下のような登録例があります。

ソバリエ 小嶋屋総本店
酢ムリエ オークスハート
ハムリエ プリマハム
タビリエ JTB
シネリエ 松竹
カラリエ 花王
米リエ オギハラ工業
コンクリエ 太平洋セメント
マドリエ LIXIL
飲ムリエ ぐるなび
ネムリエ 丸八真綿
漢ムリエ タキザワ漢方廠
タオリエ 西川産業
ラヂムリエ 三朝温泉旅館協同組合

なかなか面白い造語商標ですね。
しかし、面白い造語で商標登録ができた、と喜ぶだけで終わってしまっては宝の持ち腐れになります。

本来の「ソムリエ」の意味=ワインについての豊富な知識を持ち、レストラン等で客の要望に応えてワインを選ぶ手助けをする専門職=を考えれば、「○○リエ」商標の活用方法のヒントが得られます。

おそらく消費者は、「酢ムリエ」に相談すれば好みにピッタリあった酢を提案してくれる、「シネリエ」が紹介してくれる映画はまずハズレがない、といったことを期待するでしょう。

このように、人々が「○○リエ」商標に信頼を寄せるとき、商標の「品質保証機能」が全面的に発揮されています。

商標の基本的な使い方は、商品・サービスのネーミングとして使用することですが、より上手な商標の活用方法のひとつがこの「品質保証機能」を発揮させることなのです。

一般社団法人 日本野菜ソムリエ協会(http://www.vege-fru.com/)は、商標登録「野菜ソムリエ」(登録4957386号)を持ち、飲食関係者向けに「野菜ソムリエ」の資格制度を実施しています。協会の講座を受講し検定試験にパスした人は、「野菜ソムリエ」を名乗ることが許されます(つまり、商標の使用が認められる)。

健康志向の消費者、野菜を美味しく食べたい消費者は、数ある飲食店や小売店の中から「野菜ソムリエ」の看板を掲げるお店を選んで利用するでしょう。協会の資格制度によって「野菜ソムリエ」の品質が保証されているので、消費者はこれを信用してお店を利用することができます。そういった信用が蓄積することで、商標「野菜ソムリエ」の価値がどんどん上がってきます。そうすると、より多くの人が「野菜ソムリエ」の資格を取得しようということになります。

商標使用によって、商標権者(協会)、商標使用者(お店)、消費者の3者共が利益を得られる構造ができています。これが一枚上を行く商標の活用方法です。

弊所クライアントでも、商標を上手に活用して資格・検定ビジネスをされている例があります。

■終活マイスター(登録5722725号)
一般社団法人日本終活マイスター協会
https://www.facebook.com/shukatsum/

「終活マイスター」は、人生の終わりの段階で、老後の憂いなく残されるであろう家族が心配なく諸事にあたれるよう、生前に対策を打つためのアドバイスを行う専門家です。

■腸トレ(登録5706053号)
一般社団法人腸トレ協会
http://cho-tre.com/index.html

「腸トレ」認定セラピストは、腸の中と外から働きをかけて健康な腸を取り戻し、便秘解消・美肌・ダイエットなど、身体の内側からの健康増進をサポートします。

商標を自分のものと思い込まず、他人に上手に活用させる仕組みを作れば、より大きな利益が得られます。