アップルでさえ失策? グローバル時代の出願区分

観光地に出かけると、あらためて実感するのが、訪日外国人、それも個人旅行者の急増。スマホ片手に路線バスを乗り継ぎ、手元をのぞいてみるとアップル社のiPhoneユーザーが過半数──。いまや中国におけるiPhoneの販売台数が米国でのそれを上回る勢いで伸長しているそうで、グローバル化とはこういうことかと思い知る。

こうした中国本土でのiPhone人気を裏付けるように、2016年5月、「米アップル社が中国でiPhone登録商標の奪還に失敗」というニュースが流れた。初代iPhoneは、2007年1月に米国において発表され同年6月に発売開始。日本を含む22地域で2008年7月11日、中国本土では2009年10月30日に発売された。

今回問題となったのは、中国の新通天地社の商標「IPHONE」。2007年9月、同社が皮革製品の区分(18類)で出願し、2012年になってアップル社が異議申立をしたものの翌13年に敗訴。今回高等裁判所から、アップル社の訴えを退ける判決を下されたものだ。

つまり、iPhone発売前の中国では、「その名は知られておらず、周知性はなかった」と判断され、当時からIPHONEの名の財布やブックカバーなどが出回ってきており、これにお墨付きがついた。

アップル社にとっての第一の問題は、2006年といわれるiPhone出願時に皮革の区分で商標出願していなかったこと。さらにいえば、すでに国際的な話題になっていた2007年の時点で、中国国内での周知化という戦略をもたなかったことだ。

ライセンスビジネスに精通したアップル社でさえ、こんなことが起こりうる。一般企業においては、いわずもがなである。

ロイヤリティは 1億円

ところで、日本においてアップル社は「iPhone」のスマホ区分(9類 携帯電話ほか)の商標を保有していない。権利者名は、アイホン株式会社。日本を代表するインターホンメーカーで、高度成長期の昭和29(1954)年に「アイホン」を当時の区分(電気通信機)で出願・登録。アップル社が発売前の2006年にiPhoneを出願したものの特許庁は拒絶。苦肉の策として、登録申請の名義をアイホン社に変更し、アップル社は専用使用権を設定して、ロイヤリティを支払っている。その額は年間およそ1億円だそうだ。

本家iPhoneの日本国内での出荷台数は低迷気味とはいえ、年間1473万台(2015年)。1台当たり約6.79円。さて。これを高いとみるか、安いとみるか…………。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.10 2016/06/30より

パロディは、徹底的に遊ぶべし♪

ネットニュースで、この春注目を集めたのが、スイスの高級時計「フランク ミュラー®」vsパロディ時計「フランク三浦®」 の事件。

ミュラー社は「フランク三浦」の商標登録に対し、「“ミュラー”へのただ乗り」だとして無効審判請求を行い、特許庁では登録無効の審決を下したものの審決取消訴訟に至り、4月12日の知財高裁の判決で、フランク三浦側が逆転勝訴した。

ここでポイントとなったのが出所混同のおそれがあるか否か。そして「ただ乗り」(=フリーライド)であるかどうかだった。

「フランク三浦」はかねてから「謎の天才時計師フランク三浦」の物語を設定。「『デザイン・ノリ・低価格』を追求したパロディーウォッチ」(三浦一族HPより)とあらかじめアピールし、手描き文字風の「フランク三浦」のロゴも目立つように配置。さらに、5000円前後の「三浦」と100万円超の「ミュラー」では、「混同するとは到底考えられない」という結果となった。

商品のパロディのみならず、モノマネ芸人においても、実は、同じような課題をはらんでいる。モノマネ芸人は、本家タレントの著名度に乗っかっている部分はある。商標の 「ただ乗り」では、著名商標の信用を希釈化してしまうという問題が発生するが、明らかに違うものであるという前提があれば、逆に本家の芸を再認識させるきっかけにもなりうる。芸人のモノマネを楽しむ人が、本家と混同して公演に足を運ぶことはまずないだろう。本家が公認していればなおさらというわけだ。

大石内蔵助もパロディの産物

ところで、手にとった時代小説のなか、芝居の役名に「大星由良之助」の名をみつけた。人形浄瑠璃や歌舞伎の代表的な演目「仮名手本忠臣蔵」で、おなじみの赤穂浪士の討ち 入りの物語は、内蔵助は由良之助に。吉良上野介は高師直、浅野内匠頭は塩治判官高定という巧みなパロディ名で描かれている。いうまでもなく、往時の芝居は庶民の最大の娯楽。ストレス解消の妙薬であり、戯作者や興行側は御上の取り締まりを避けるかたちで、相当の用心を以て事件を脚色したらしい。さらに調べてみると、忠臣蔵自体が『太平記』を下敷きにしていることがわかった。赤穗浪士の討ち入り直後から「楠はいま大石になりにけりなほ(名を)も朽ちせぬ忠孝をなす」という狂歌の立札が町中に立ち、大石由良之助(内蔵助)は、楠正成の生まれ変わりだというのである。

パロディとは、他作品から要素を借用し、風刺などをまじえて別の作品に引用すること。フランク三浦は自主的に生産終了し、在庫限りで販売終了だそうだ。「どうせ遊ぶなら徹底的に!」という同ブランドのコンセプトにあわなくなったのかも。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.9 2016/05/10より

この手があった!「希釈化」ならぬ「濃縮化」

2016年3月14日の発売以来 (東日本地区)、コンビニエンスストアで売り切れ続出の「ペヨング ソースやきそば」。ロングセラーの本家「ペヤング ソース焼きそば」 とは異なる横長のパッケージながら、まったく同じ印象のカラーリング、似たような名称………。

「誤字?」、「商標権侵害?」など、世間の憶測を呼んでいる。実はこれ、本家ペヤングを主力商品とする〝まるか食品株式会社〟(群馬県伊勢崎市)が発売した商品。「ペヨング」は、麺の量を14g減らした廉価版で、「気になる本家との味の違いは食べてみてのお楽しみ!」(まるか食品)だそう。2014年の異物混入事件で全面的製造ラインの見直しを行った同社が、満を持して新発売するセカンドライン商品というわけだ。

本家「ペヤング」は、発売に先立つ2年前に調味料等の区分で商標出願。後に即席そばの麺や野菜ジュースなどの指定商品でも商標を取得している(第1201550号)。一方の「ペヨング」は、発売直前2015年11月24日に出願。ペヨング発売と前後して、似たようなネーミングの「ペユング」も、商標出願していることがわかった。さらにあらためて確認してみると、本家「ペヤング」出願の1976年に同時に「ペアング」を出願。現在も商標権を保持していることがわかっている。

ブランド史上初? 商標の濃縮化戦略

「アレンジを加えることなく、直截にアピールを重ねる」。ブランド戦略の王道である。この王道を歩むものが気をつけねばならないのが普通名称化。例えば、「うどんすき」は老舗うどん店、美々卯の登録商標だが、東京高裁により普通名称化していると判断された。こうした有名な商標について、他人が様々な商品やサービスに使用することで、その商標としての機能を弱め、普通名称化しようとすることを、「商標の希釈化」という。

一方、似たようなネーミングの商標を取得するまるか食品のブランド戦略は、この希釈化の逆をいく「濃縮化」戦略というべきであろう。異物混入事件からの立ち直りをかけたセカンドライン商品の投入。あえて近い商品に近い名称を与える。これにより商標権の効力を濃くしようとする戦略と見る。

色のついた溶液をシャーレに入れて上から見ても色は薄い。しかし、同じ量の同じ液体を試験管に入れて、上からみれば濃い色に見える。シャーレや試験管は、商品の違い。色のついた液体は商標である。

商品をわずかの違いで差別化し、似た名称をつけることで信用回復を図る「まるか食品」の戦略を商標の濃縮化戦略と見て応援したい。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.8 2016/03/31より

マイナス金利と知財金融

2016年1月29日、日本銀行は欧米並みのマイナス金利政策の採用を発表。妙薬か劇薬か、はたまた副作用は──と市中は戦々恐々。一方で資金需要の喚起が予測され、なかでも中小企業を対象とした「知財金融」がにわかに注目を集めだした。

知財金融には、(1)特許権など知的財産権を担保とする融資と、 (2)特許権などの知的財産権を保有している事実をもとに企業競争力や資金返済力の一部として評価し融資するものの2種がある。このうち (1)はライセンスビジネス等限定的なケース。(2)は知財を活用したビジネス全体を評価する「知財ビジネス評価書」をもとに経営評価するもの。評価は金融機関と提携した第三者機関が行う。

現在、知財ビジネス評価書に取り組んでいる金融機関は、政策金融公庫のほか、東京都民銀行、千葉銀行、愛知銀行など、22行(平成26年度)。特許庁では平成26年 度より知財金融促進事業をスタートさせ、知財ビジネス評価書の無料作成や、評価機関(提携作成会社)の育成をするほか、普及啓発のため、 融資マニュアルの作成などをすすめている。近い将来、評価制度の拡充等により、地方銀行や信用金庫などにも急速に普及の見込みとか。地方創生のカギとなることも期待されている。

渉外担当がまめに足を運び、事業性の評価をしていた時代はいまやむかし。不動産担保でもなく、かたちのない技術力や知的財産が、資金需要を満たす時代がやってきそうだ。

たのしく仕事をするため

「時間貯蓄銀行」を設定したファンタジー小説『モモ』(*)を世に問うたドイツの作家ミヒャエル・エンデは、金利につられ時間を銀行に預 けることで、逆に時間に追いまくられ、人々が疲弊するさまを描く。時間は貨幣のアナロジー。児童文学に名を借りて、貨幣経済を痛烈に批判 したものだ。彼がその著書『エンデの遺言』のなかで言及した地域通貨の発想は、我が国において地方活性化を目指した地域通貨導入の際に精 神的支柱となった。主人公『モモ』の親友、道路掃除夫ペッポの言葉を紹介しよう。

「いちどに全部のことを考えてはいかん、わかるかな? つぎの一歩のことだけ、つぎの一呼吸(いき)のことだけ(中略)を考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
「するとたのしくなってくる、これがだいじなんだな、たのしければ仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」

知財金融は緒についたばかり。われわれ弁理士・特許事務所は、クライアントに対してつぎの一歩を示し、企業活動を楽しくするお手伝いをするという、活躍の場が見えてくる。

*出展=ミヒャエル・エンデ作大島かおり訳『モモ』(岩波少年文庫127)

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.7 2016/02/23より

マーケット変化と商標ライセンス

インフルエンザなど感染症対策の第一は、うがいと手洗い。発売以来、 日本のうがい薬マーケットを牽引してきた「明治 イソジンⓇ うがい薬」が、きたる3月末にライセンス解消というニュースが飛び込んできた。

データベースを確認してみると、イソジンⓇの出願は1960年。出願人は米国系製薬会社のムンディフアルマ社。61年に医療用の殺菌消毒薬として明治製菓(当時)が発売し、83年に市販薬を発売。キャラクター「カバくん」も、85年にはテレビCMに登場し、後に明治のグループ会社が図形商標登録している。つまり、「イソジンⓇ」の名称と「カバくん」は30年以上にわたり、二人三脚でブランドを育ててきたわけだ。それが2016年4月からは、明治の商品には「イソジンⓇ」の名称が消え、「明治のうがい薬」名と「カバくん」マークで独自路線を行く。半世紀以上にわたる関係の解消の背景にあるものは、なんだろうか。

報道によれば、ムンディフアルマ社は、欧米を中心に慢性腰痛やがんに 伴う痛みの治療薬を販売してきたが、昨年から日本を重点地域に定め、積極投資。その一貫として、すでに日本市場に浸透しているイソジンⓇブランドを自社展開することを決め、シオノギ製薬グループが独占販売する。フェミニンケアなど幅広い商品を計画しており、菓子や乳業など多様な食品を提供している明治よりも、製薬やヘルスケア商品に特化したシオノギに乗り換えたということだろう。

廃棄不徹底がブランドを傷つけかねない状況が頻発している昨今──。 明治のイソジン製品が、4月以降には市場に流通しないよう、徹底した在庫回収策がとられることが期待される。

高級感がウリでなくなったとき

商標のライセンス解消といえば、「プランタン銀座」が、仏プランタン社との商号・商標契約を2016年末で終了するというニュースが同じころに届いた。プランタン銀座は、1984年、破竹の勢いだった(株)ダイエーが、安売りスーパーの別業態として、おしゃれで高級なイメージを獲得して開業。30年余を経た現在は、読売新聞グループの会社が運営し、ニトリやユニクロが出店する商業施設になっている。ダイエーの変遷はもとより、その時代の目論見は継続できず、いまやフランスの老舗百貨店「プランタン」の高級感あふれるイメージとの齟齬は否めない。 契約期間の満了とともに更新に至らなかったのもいたしかたないことだろう。2017年春の新装開業後は、主婦や訪日外国人需要を含めた幅広いターゲットに訴求する予定だそうだ。

歌は世につれ、世は歌につれ………。商標やライセンス契約も「世につれ」というわけ。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.6 2016/01/25より

神様の商標登録

二〇一五年十月。「瀬織津姫(セオリツヒメ)」という縄文の女神の名が商標登録されていることが一般に知られるところとなり、精神世界に関心が高い人々のあいだで、大きな論議を呼んだ。いわく──

「瀬織津姫という神が〝金の成る木〟と判断したため、それを独占しようと考えたのだろう」
「姫神の神名を(なぜ)金銭云々という行為が伴う、独占する行為をなさったのでしょうか」
「神への冒涜である」

──等々。特許庁や国家に対する不見識を嘆くものもあれば、なかには「憲法違反」という論まであり、おだやかではいられない。

データベースで確認してみると、商標第5415463号、出願区分は35類。平成十九年に制度開始した「小売等役務商標」と呼ばれる区分で、小売または卸売業の看板やショッピングカート、包装紙、制服等の表示が対象。商標「瀬織津姫」は、出願人が手がけている書籍やCDの小売を指定するばかりでなく、ありとあらゆると言っていいほどの商品の「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を細かく指定している。ここが「ほとんどの商品を網羅して使えないようにしている」と批判される所以でもある。

権利者である有限会社ヤンズの山水治夫氏は、自身のブログのなかで「僕は瀬織津姫をなにも独占しようと思いしたわけではありません」。また、お守りや札、書籍やアロマなど、すでに瀬織津姫名を冠したものが流通し、権利行使していないことを理由に、独占や金員が目的ではないことを強調している。

商標は権利取得しても、過去3年間、実際に使用されていなければ「不使用取消審判」の対象となる。

日本酒や包装紙、自動車にも

ところで、うちの特許事務所でも神様の商標登録を手がけたことがある。ある神社の氏子が、以前神社が配布していた木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)の図版を和菓子の包装紙に使用したい旨、神社へ相談し、一事業主に独占されないように、またほかの氏子や地域でも広く使ってもらえるようにと、神社が菓子の区分(30類)他で図形を出願・登録した。ちなみに我が国でもっとも重要な女神「天照(アマテラス)」の商標は四〇件。一例として、富士重工(株)の「AMATERRAS/アマテラス」(第2520860号/9類・12類=自動車ほか)がある。

商標制度は、八百万の神々の国といえども、広くあまねく信仰をあつめる神々の世界とは相容れないことも多いらしい。下界の決まりごとの前で、女神たちがさざめくように笑っているような気がする。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.5 2015/12/25より

認定制度と商標のビミョーな関係

新そばを求めて、安曇野を訪ねたときのこと。店内の目立つところに、商標の登録証が掲げられているのを見つけた。

よく見ると、「信州そば切りの店」の看板風のロゴがあり、出願区分は、「第42類 長野県産そば粉を使用した手打ちそばの品質に関する認証」(登録第5657688号)とある。

別の額には「信州そば切りの会」による、信州そば切りの定義(一、そば粉は長野県産のみ 一、つなぎの割合は30%以下 一、そば打ちの工程すべてが手作業)があり、この会よる認定制度の概要が記されていた。

もちろん、供された新そばは、香り高くまことに美味で、ほかの認定店にも足を運んでみようかという気にもなった。ある種のグループで一定の品質を保証する「証票」として商標を活用し、また日々の営みによって信用を蓄積していくことは、商標活用の王道でもある。しかし。そば湯をすするに至り、「ちょっと待てよ」と。というのも、前日も山あいの民宿でうまい手打ちそばを味わっていたからだ。

商標権というのは、法的に保障された非常に強い権利であるとともに、排他的効力を有する。認定を受けてない店が「信州そば切りの店」の看板を掲げる行為は商標権侵害となり、商標権者は差止請求ができる。あくまでも認定制度についてのサービスマークであるし、「そば」そのもの(区分第30類=穀物の加工品)や飲食物の提供(43類)でもないから、悪意は感じられない。

このところ、より広く知らしめるためという善意、そして悪用を阻止するため(とんでもない品質のものに名付けて販売されることがないよう)という例が増えているような気がしている。

権利主体に注目する

データベースで調べてみると、権利者が個人名であることが気になった。これは任意団体では権利主体になれない故にリーダー名にしたのではないか。あえていえば、こうした個人名での商標取得は、いわば善意、もしくは性善説に基づいた日本人的な感覚でもあると思う。商標権はあくまで個人のものであって、相続も譲渡も可能な資産であるからだ。

団体を一般社団法人やNPO等の法人化するか、あるいは地方自治体等が主体になって認定制度をつくり、権利主体となったほうが、より公共性の高い認定制度なり、商標活用=地域ブランドづくりになるのではないかと考えた。

認定制度といえば、伝統芸能の家元制度の商標事件を思い出した。本家&元祖争いは古今東西、永遠の世のならいでもある。これについては、また別の機会に──。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.4 2015/11/30より

パクリとインスパイアの境界線

パクリ騒動で、すっかりミソのついた五輪エンブレム問題。商標法だけの観点でみると、マーク自体に類似する先願は存在しなかったことが判っている。それではなぜ、取り下げるに至ったのか──。

それは、著作権に 抵触する可能性が大きかったため。当初、使用差止を求めたベルギーの劇場(後に取下)やデザイナーが主張しているのは、創造的に表現した自らの著作物に、依拠または盗用して いる疑いがあるからだ。デザイナーS氏 が、洋酒メーカーのエコバッグ・デザインにパクリであったことを認めたことで、いっそう倫理的・感情的な問題として膨張していった。事実関係はといえば、いまも闇のなか。本人が沈黙している限り、白日の下にさらされることはない。

ヴィトンの楽器が誕生か?

ところで、第67回正倉院展(2015年10月24日〜11月9日・奈良国立博物館)で、1300年前の「紫檀木画槽琵琶」をメインビジュ アルにしたポスターが公開されるや、ちょっとした論議が巻き起こった。
というのも、ペルシャに起源をもつという四弦琵琶の背面デザインが、ぱっと見たところ、ルイ・ヴィトン社の代表的な図柄「モノグラム」にそっくりだから。紫檀の濃い茶色に、象牙や緑に染めた鹿の角などを組み合わせた小花模様がナナメに規則正しく並び、遠目には、ヴィトンが琵琶をつくりはじめたかのようさえに見えてしまう。

偽造品対策として誕生したモノグラム

ルイ・ヴィトン社のモノグラム・キャンバスは、1896年、 偽造品対策&世界的ブランド確立のため、2代目のジョルジュ・ヴィトンにより考案されたもの。パリ万博をきっかけに大流行していたジャポニズムの影響を受け、日本の家紋に「インスパイア」(=触発)されたものと伝えられている。しかし、モノグラムのバッグを見て、日本の家紋をイメージする日本人は少ない。これぞ、オリジナルの著作物というわけだ。また、五輪エンブレム問題以上に、正倉院の収蔵品を100年以上前のフランス人が参考にしていたかどうかを検証することは不可能に近い。つけ加えれば、1300年前の琵琶だから、著作権も切れている。

ルイ・ヴィトン社では、「偽造は、児童・強制労働などと同じく人権を侵害する行為であり、コミュニティに被害を与えるもの」と明言している。知的財産が社会的資産であることを物語る査証だろう。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.3 2015/11/01より

吉本の「面白い恋人」はなぜ生き残ったのか──

少し前のお話──。
2011年11月、北海道銘菓として知られる菓子「白い恋人」の製造・販売元の石屋製菓(株)が、パッケージもネーミングも酷似した「面白い恋人」(みたらし味のゴーフレット)を製造・販売する吉本興業(株)他を相手どり、商標権侵害および不正競争防止法を根拠とする商品の販売禁止および破棄を求める訴訟を提起。1億2000万円の損害賠償を請求していた。ところが、2013年2月には、和解成立のニュースがネットに踊ることに。吉本興業は「面白い恋人」のパッケージ図柄を変更、販売を関西6府県に限定することになった。

つまり…。石屋製菓の商標「白い恋人」(30類・菓子及びパン)に、「面」を付加しただけのネーミング、図案変更したといっても、白とブルーを基調としたパッケージはそのまま。石屋製菓が提示していた損害賠償を一銭も払うことなく、引き続き関西方面で製造・販売され続けることになった。

「和解」なので、双方納得のうえであることは間違いない。けれども、どうみても石屋製菓側が大きく譲歩した内容にみえてしまう。日ごろ「商標権は、企業規模も問わない強力な権利であり(事業の)武器」と言い続けている商標担当としては、(吉本フアンではあるけれど)もやもやが残る。消費者の目でみれば、面白ければ手に取りたくなってしまう。どうみてもパロディで、お土産を渡したときに、「くすっ」と笑ってもらえることが、商品価値。吉本側はその価値を手放さずにすんだということだろう。

この事件の場合、商標権侵害では非類似の可能性もあるが、同時に不正競争防止法で争われてお り、混同の可能性があると判断された。不正競争防止法は、営業秘密侵害や原産地偽装、コピー 商品の販売などを規制するもので、商標のように一律判断ではなく、ケースバイケース。裁判所もパロディ、つまり「しゃれ」を理解したうえで、地域限定などの和解 勧告に至ったと考えられる。

ちなみに、うちの特許事務所にも、商標権の侵害についての相談は日常的にやってくる。使用をやめさせればいいのか、損害賠償を請求するのか、はたまた敵対せずにライセンス契約をしライセンス料を受け取る方もあるのか…等々。ケースバイケースであり、落としどころを見つけるのが我々のしごとでもある。

もしもうちの特許事務所が石屋製菓の代理人であったなら──菓子は石屋製菓で製造するOEMにし、商標権に関してもライセンスを供与することを提案していたかもしれない。共存や和解のかたちは一様ではないのだ。

尚、吉本興業ではこの訴訟に先立ち、2010年に「面白い恋人」を商標出願(商願2010-66954)していたが、「白い恋人」と出所混同のおそれがあるとして特許庁により拒絶査定がくだされている。

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.2 2015/09/01より

「STAP細胞はあります」まんじゅうはいかが?

Vol.01-2015/06/30
Vol.01-2015/06/30

Twitterの商標速報bot(それにしてもいろんなbotがあるものです)で、「STAP細胞はあります」のネーミングが2015年2月17日に商標出願されていることがわかり、ネットでも話題になりました。商標登録とは、商品(モノ)や役務(サービス)に対するネーミングを、その商品・サービス区分ごとに出願するもの。では、何の区分で出願しているのでしょうか。商標を担当している小生も気になって、さっそく我ら知財プロのための特許情報プラットホームで、照会をかけてみたところ……

出願人は、ベストライセンス株式会社。
出願区分は
───(実際にはずらずらとかなりの範囲を指定)
9類:電子通信機械器具、理化学機械器具、測定機械器具 他 
16類:紙類、印刷物 他
35類:広告 他
41類:電子出版物の提供、映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興業の企画又は運営 他
42類:電気機械器具又は電気通信機械器具に関する試験又は研究 他
45類:自動車、二輪自動車、自転車、列車又は船舶に関する情報の提供 他
───であることが判かりました。

広告を含む広範な区分への出願から、この会社は、奇抜なネーミングで商標権を先取りし、そのブランドで、一儲けしようというと考えたのかもしれません。また、先出願はないと思われ、おそらく「STAP細胞はあります」はこのままでは登録査定になると思われます。

いまとなっては、いにしえの感さえあるフレーズですが、この会社やそのライセンスを活用する会社が、今後この商標をどう扱ってゆくのか、興味深いところです。

ちなみに、6区分を出願した場合、特許庁に支払う印紙代は、5万5,000円、登録になった場合、特許庁に支払う登録費用(10年分)は、6区分で22万5,600円(分割納付制度を利用する場合は、13万1,400円)。10年ごとに更新制度があり、半永久的に使用することもできるわけです。

また、菓子などの区分第29類では、未出願。十分に登録の可能性があります。これから「STAP細胞はあります」まんじゅうをつくろうと思っている方!
ぜひ、特許業務法人プロテック担当ジョニーまでご連絡ください。
お待ちしておりま〜す!

特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 Vol.1 2015/06/30より