広告効果は絶大。ステーキの特許出願

近年、飲食店やネットショップなど、店名を商標登録するケースがふえてきた。飲食店の知的財産権といえば、「鳥貴族」vs「鳥二郎」の商標トラブルが記憶に新しいところ。

うちで代理人をつとめる飲食店の商標では、例えば繁華街でよく見かける「やってます」看板(第5154790号 (株)ジャックポットプランニング)がある。お酒や被服の区分でも権利取得しており、オリジナル商品やユニフォームにも活用。町には商標権侵害になりそうな看板があふれているものの、同社は権利も主張せず、また係争するつもりもない。社長によれば、商標登録は「最初にはじめたのはうちだよ!」という矜持のようなものだそうだ。

ところで、商標が主流の飲食店業界にあって、注目されているのが、ステーキの特許だ。

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「いきなりステーキ」を展開する(株)ペッパーフードサービスでは、2014年「ステーキの提供システム」を特許出願。補正の後、2016年6月に登録になった(特許第5946491号)。特許の範囲を確認してみると「お客様を立食形式のテーブルに案内するステップとお客様からステーキの量を伺うステップ、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップ、カットした肉を焼くステップ、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップまでをステーキの提供システム」(プレスリリースより)だとか。これのどこが特許なのか素人にはわかりにくいが、補正書類には「お客様が案内したテーブル番号が記載された札と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計算機と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印とを具えることを特徴とする、ステーキの提供システム」なのだそうだ。

 

肉加工の方法が先輩特許

 

つまり特許的には、ものやサービスの組み合わせがシステムであり「新規性・進歩性」があるということ。この特許がいきなり!ステーキの営業活動に意味があるかどうかは神のみぞ知る、といったところだろうか。しかしメニューに「特許取得!」の文字が躍っていたら、思わず注文したくなるのが人間の性。広告効果は絶大といえるだろう。

ちなみにもう1軒、下町のステーキ店「レストランカタヤマ」【(有)片山商店】のほうが、ステーキの特許としては先輩格。牛モモ肉の一部である「らんいち」を独自の加工方法するもの(1988年特許第2808253号)。低価格で味はよいものの、筋が多くて固い「らんいち」を5年の歳月をかけてカット法を編み出したものだとか。

ローストビーフ丼に、立ち食いステーキ⋯⋯⋯⋯肉ブームはまだまだ続く気配。ぜひほかのレストランでもあらたな発想で特許出願を。もちろんご用命くださいませ。

 

*特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖vol/17(2017/1/1発行)より

 

  • 参考

(株)ペッパーフードサービス プレスリリース(2016/08/02)

レストランカタヤマ【カタヤマの秘密】