「フランク三浦」問題〜パロディは、徹底的に遊ぶべし♪

ネットニュースで、この春注目を集めたのが、スイスの高級時計「フランク ミュラー®」vsパロディ時計「フランク三浦®」の事件。

ミュラー社は「フランク三浦」の商標登録に対し、「“ミュラー”へのただ乗り」だとして無効審判請求を行い、特許庁では登録無効の審決を下したものの審決取消訴訟に至り、4月12日の知財高裁の判決で、フランク三浦側が逆転勝訴した。このポイントとなったのが出所混同のおそれがあるか否か。そして「ただ乗り」(=フリーライド)であるかどうかだった。

a7

 

 

「フランク三浦」はかねてから「謎の天才時計師 フランク三浦」の物語を設定。「『デザイン・ノリ・低価格』を追求したパロディーウォッチ」(三浦一族HPより)とあらかじめアピールし、手描き文字風の「フランク三浦」のロゴも目立つように配置。さらに、5000円前後の「三浦」と100万円超の「ミュラー」では、「混同するとは到底考えられない」という結果となった。

商品のパロディのみならず、モノマネ芸人においても、実は、同じような課題をはらんでいる。モノマネ芸人は、本家タレントの著名度に乗っかっている部分はある。商標の「ただ乗り」では、著名商標の信用を希釈化してしまうという問題が発生するが、明らかに違うものであるという前提があれば、逆に本家の芸を再認識させるきっかけにもなりうる。芸人のモノマネを楽しむ人が、本家と混同して公演に足を運ぶことはまずないだろう。本家が公認していればなおさらというわけだ。

 

大石内蔵助もパロディの産物

 

ところで、手にとった時代小説のなか、芝居の役名に「大星由良之助」の名をみつけた。人形浄瑠璃や歌舞伎の代表的な演目「仮名手本忠臣蔵」で、おなじみの赤穂浪士の討ち入りの物語は、内蔵助は由良之助に。吉良上野介は高師直、浅野内匠頭は塩治判官高定という巧みなパロディ名で描かれている。

 

いうまでもなく、往時の芝居は庶民の最大の娯楽。ストレス解消の妙薬であり、戯作者や興行側は御上の取り締まりを避けるかたちで、相当の用心を以て事件を脚色したらしい。さらに調べてみると、忠臣蔵自体が『太平記』を下敷きにしていることがわかった。赤穗浪士の討ち入り直後から「楠はいま大石になりにけりなほ(名を)も朽ちせぬ忠孝をなす」という狂歌の立札が町中に立ち、大石由良之助(内蔵助)は、楠正成の生まれ変わりだというのである。

 

パロディとは、他作品から要素を借用し、風刺などをまじえて別の作品に引用すること。フランク三浦は自主的に生産終了し、在庫限りで販売終了だそうだ。「どうせ遊ぶなら徹底的に!」という同ブランドのコンセプトにあわなくなったのかも。

 

 

【参考】

三浦一族オンラインショップ(フランク三浦)

特許業務法人プロテック

プリント版ちざいネタ帖 VOL/9 2016/04/28より

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です