商標王トランプ政策のこれから

 

トランプ米大統領の就任に伴い、米国内及び周辺諸国はもとより、外交政策や世界経済の動向が注視される昨今──。

われわれ知的財産業界にとっては、なんといっても注目されるのが米国のTPP(環太平洋パートナーシップ)離脱の行方だ。著作権法など知的財産関連改正法案は、TPPが日本国について効力を生じる日が施行日とされるが、12ヵ国すべてが国内手続きを終えるか、12ヵ国のGDPの85%以上を占める少なくとも6ヵ国が手続きを終えることが要件で、米国のGDPはTPP加盟国の6割を占めるため、TPPが発効する可能性は実質的になくなってしまう。

またオバマ政権下での米国特許商標庁の長官は、元グーグル社の特許弁護士だったが、シリコンバレーと何かと反りの悪いトランプ政権下では、医療・化学系特許弁護士へのチェンジもうわさされている。

とはいえ、共和党の政策(2016年)では、「知的財産を保護することは国家安全保障問題のひとつ」と明記されているほか、(特に中国など)「侵害者に対する強い措置」が謳われている。発明家を叔父にもつトランプ氏は、特許政策に強い関心をもっているといわれる。矛盾が指摘されがちなトランプ氏の政策であるものの、知的財産においても攻めと守りのバランスが課題になってくるにちがいない。

 

選挙スローガンも商標に

 

2017年1月初旬に届いた米国特許取得ランキング(2016年)では、米国企業が約3万3000件(全体の41%)と最多であるものの、日本企業が約2万3000件(同28%)、韓国企業が約1万2000件(同15%)。企業別では1位は米IBMで、日本企業ではキヤノン、ソニー、東芝、トヨタ自動車、パナソニックIPマネジメントなど8社が、トップ25にランクインしている。アメリカファースト政策下ではどうなっていくのか、まったく未知数でもある。

ところで、ビジネスマンでもあるトランプ氏は、個人名義で「TRUMP」「TRUMP TOWERS」など320件の商標を出願・登録し、すでにマネタイズ(収益化)に結びつけているそうだ。選挙スローガン「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」(アメリカを再び偉大に)も、80年にレーガンが使いはじめた言葉だが、米国で商標登録(登録第5020556号)。Tシャツなど選挙グッズのほかに、政治運動にかかるサービス等の区分でも権利取得している。

一方、中国では、トランプ氏と関係のない企業が商標「TRUMP」を登録しているそうだ。トランプ氏のキャラクターを活かして、中国の模倣品、冒認出願にどこまで強い態度で臨んでいくか──われわれも当分トランプ氏から目が離せそうにない。

 

  • 特許業務法人プロテック プリント版ちざいネタ帖 18 2017/2/7より