先願権(後願を排除する効力)の特許と商標との違いについてご注意ください。

特許出願、商標出願、いずれの場合も、

その出願についての審査が進むと特許庁から拒絶理由通知が来る場合があります。

意見書を提出して、それが認められ、特許権取得、商標権取得につながればよいです。

しかし、

審査官がなかなか認めてくれない。

ついに、拒絶査定。

 

さて、これに対して承服せずに反論するには、

拒絶査定に対する審判請求しかない。

金がかかるぞ、どうしよう。

 

という場合に、

「他人もこれについて権利取得できないのだからいいだろう。あきらめよう」

という気持ちが働くことがあります。

 

この場合、先願権(後の出願を排除する効力)に違いがあることにお気をつけください。

特許の場合ですと、出願公開(通常は出願から1年半です。早期公開される場合もあります)されますので、出願内容が公報という形で特許庁のデータベースにより誰でも見ることが出来る状態になります。そして、出願公開公報が特許庁のデータベースで誰にでも見られる状態は、ずっと長く、数十年間続きます。

したがって、当初の出願書類に書いていたものと同じものを他人があとから特許出願しても権利取得できないといえます。

 

しかし、

商標の場合は、権利取得できない場合にあきらめると、先願権は、なくなってしまうことにご注意ください。

 

ひとつ、モデルとして、同様の商標について、Aさん、Bさん、Cさんが商標登録出願をした場合について考えます。

Aさんは、登録されて商標権を取得します。 Bさん、CさんはAさんの商標権の存在を理由に拒絶されてしまいます。

Bさんは、

「Cさんも商標取得できないのだから、いいや」

と考えて、商標権の取得をあきらめます。

 

しかし、Cさんはあきらめずに拒絶査定不服審判で争います。

その後、Aさんの商標権が更新されずに消滅し、1年以上経過して、Cさんの商標登録が認められてしまいます。

そのときになって、Bさんは、悔しがってもあとの祭りという事態になります。

 

商標の場合は、出願としての係属が解除されると、特許庁のデータベースからも削除され、検索でヒットしない状況になります。